2010年06月号 NUMBER 3 MYSTERY #11
<今月の3つの数字>
「2センチ」「106位」「2年」
毎回このコラムでは、最初に上げた3つの数字から展開される話題を想像してみてください、と書いています。しかし、今回の3つの数字は難易度が高いかもしれません。ヒントは、私たちの生活の中でも非常に身近なモノが今年中に大きく変化するかもしれない、という話題に関係がある数字です。
SIMカードがユーザーを「識別」する
2010年4月、通信事業を統括する総務省は、国内の各携帯電話のキャリアに対し「SIMロックを解除するように」という答申を出しました。現在、一般的に普及している携帯電話には「SIMカード」と呼ばれる、切手を一回り小さくしたような2センチ四方程度のサイズのICカードが内蔵されています。「SIM」とは「Subscriber Identity Module」の略で、「契約者識別モジュール」という意味です。
多くの場合、携帯電話の充電池の裏側などに差し込まれているので、見たことがある人もいるはずです。このSIMカードによって、利用者の契約情報が特定され、携帯電話が利用できる状態になるというわけです。別の携帯電話にSIMカードを差し替えれば、自分の携帯電話として利用できます。ただし現在は、SIMカードを別の携帯電話に差し替えて利用出来るようになるのは、同一のキャリア内に限られています。例えば、auの携帯電話で使っていたSIMカードをDoCoMoの携帯電話に差し替えても、使えるようにはなりません。この状態を「SIMロック」と呼びます。
下がるか?携帯電話の利用料金
そして今、この「SIMロック」が大きな問題となっています。世界経済フォーラムが2010年3月に出した報告書によると、日本のITの活用度は前年の17位から21位にランクダウンしています。日本のIT競争力の評価が奮わないのは、対象となった113か国と地域の中で106位とされた携帯電話の利用料金が大きな要因の1つです。SIMロックが原因で、携帯電話の利用料金に関した公正な競争が働いていない、というのが総務省の見解です。
では、SIMロックが解除になったら、携帯電話の利用料金はどうなるのでしょうか? まず考えられるのは、気に入った料金プランがあれば、携帯電話端末を買い換えることなくキャリアを自由に移行できるようになります。そのため、携帯電話利用料金の価格競争は激しくなり、結果として基本料や通話料などの価格は下がるでしょう。逆に、キャリアがユーザーを囲い込むために肩代わりしてきた携帯電話本体の価格は、確実アップするでしょう。SIMロックが解除されれば、携帯電話本体でユーザーを縛ることができなくなるからです。
SIMロック解除は日本を「開国」できるか?
「SIMロック」の解除が起こすインパクトは、携帯電話の利用料金は安くなる、という単純な話ではありません。人気のある最新機種は高価なため、なかなか手が出ない人も多いでしょう。壊れてしまいさえしなければ、3年でも4年でも同じ携帯電話を使い続ける人が増えるはずです。また、携帯電話本体の中古市場も賑わうことになります。高性能なデジカメ機能や、音楽プレイヤー機能、Webブラウズ機能などが必要ないユーザーは、型落ちの中古携帯電話で十分だと考えるようになるからです。
つまり、今の携帯電話ユーザーの多くが当たり前のように感じている「最新機種を購入して2年縛りが終ったらまた次の最新機種に乗り換える」という独特の購買サイクルが終わることを意味しているのです。それは、ユーザーが自分のスタイルに合わせて携帯電話本体と料金プランを組み替える選択肢が与えられるということと同じ意味です。そして、その自由度の高さこそが、SIMロックという「鎖国」を続けてきた日本の携帯電話市場が「開国」する合図になるのです。
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